トニー=レヴィンのプロフィール Wikipedia(ウィキペディア)
トニー・レヴィン(英語: Anthony Frederick "Tony" Levin、1946年6月6日 - )は、アメリカ合衆国マサチューセッツ州生まれのベーシスト。
幼少より兄・ピート・レヴィンの影響もあって音楽に親しむ。10歳からベースを始め、その頃はクラシック畑を歩んでいた。
クラシックからジャズ、フュージョンシーンへの転向はイーストマン音楽学校時代のルームメイトで名ドラマーであるスティーヴ・ガッドの紹介によるものである。
1971年、名ヴァイブ奏者、ゲイリー・バートンのカルテットのメンバーとして初来日している。
当初ニューヨークのスタジオ・ミュージシャンとして活躍し、初期フュージョンの作品盤にもいくつもその名を見ることができる。またロック方面では、ポール・サイモンのアルバム『時の流れに』、ジョン・レノン&ヨーコ・オノのアルバム『ダブル・ファンタジー』などにその名を刻んでいる。また、ピーター・ガブリエルのバンドでも活躍。日本では野口五郎らの作品でも演奏している。
1981年から1984年にかけてキング・クリムゾンのメンバーになりその卓越したプレイで世界的に名を知られるようになる。特に1984年に出されたアルバム『スリー・オブ・ア・パーフェクト・ペアー』に収録されている楽曲「Sleepless」でのスラッピングは驚異的で、かのヴァン・ヘイレンも早速コピーしたらしいが、これはディレイを使った特殊奏法であることをのちのインタビューで述べている。
1980年代後半は、ピーター・ガブリエルやアンダーソン・ブラッフォード・ウェイクマン・ハウ、ピンク・フロイド、デヴィッド・トーンを初め様々なミュージシャンとの共演で、その人気を不動のものにした。また、プログレ関係バンドとの共演が多い為に、エマーソン・レイク・アンド・パーマー (ELP)からグレッグ・レイクが脱退した際に、後任に彼が頭文字「L」のベース奏者としてELPに参加するのではないかという憶測話までも囁かれたことがある。
1990年代に再々結成されたキング・クリムゾンにも参加。スケジュールの都合で、アルバム『ザ・コンストラクション・オブ・ライト』(2000年)とアルバム『ザ・パワー・トゥ・ビリーヴ』(2003年)には参加していないが、現在は再びキング・クリムゾンに籍を置いている。
1998年から1999年にかけて、アメリカのプログレッシブ・メタルバンド、リキッド・テンション・エクスペリメントに在籍していた。2008年に行われた結成10周年記念のライブ・ツアーにも参加した。
2005年から2007年にかけて、「Tony Levin Band」を率いヨーロッパなどを回る。ライブではピーター・ガブリエルやキング・クリムゾンのナンバーなども演奏。メンバーはトニー(ベース、ボーカル)、ジェシ・グレス(ギター、ボーカル)、ジェリー・マロッタ(ドラム、ボーカル)、ピート・レヴィン(キーボード、ボーカル)、ラリー・ファスト(キーボード)。また、カリフォルニア・ギター・トリオのツアーに参加し、ゲスト参加したジョン・アンダーソン、リック・ウェイクマンとの共演でも話題となった。
2008年夏に行われたキング・クリムゾンのギグにも参加。
自身はジャズ・プレイヤーではない、と語っているが、近年のレイチェルZのソロ・アルバムでは全編、エレクトリック・アップライト・ベースによる、完全なジャズ奏法を披露している。
2009年2月、スティーヴ・ガッド、ウォーレン・バーンハート、マイク・マイニエリとともに、1970年代に結成していた幻のクロスオーバー・バンドである「リマージュ (L`image)」の再結成ライブが行われた。春には来日公演も実現し、東京JAZZにも出演。
2010年6月、スティック奏者のマイケル・ベルニエ(Michael Bernier)、キング・クリムゾンの同僚であるドラムのパット・マステロット(Pat Mastelotto)と結成した、トリオ編成のバンド、スティック・メン(Stick Men)のツアーで来日。また、2008年から2010年にかけて、アラン・ホールズワース、テリー・ボジオ、パット・マステロットとの連名バンド(HoBoLeMaとも称される)でもツアーを行っている。
2013年、再始動したキング・クリムゾンに復帰し、2015年12月の公演で来日。
2021年、リキッド・テンション・エクスペリメント再結成。
奏法
イーストマン音楽学校時代はクラシックのオーケストラでコントラバスを弾いており、スティーヴ・ガッドの薦めでニューヨークのジャズシーンにデビューした頃も、極めてオーソドックスなベーススタイルを取っていた。実際のところ今に至るまで、その基本には変化はないと言える。しかしながら、多様なエフェクターを使用し、特にオクターバーの使い方はとても効果的で様々な演奏で深い低音でボトムを支えている。
弦を叩くようにして演奏するスティック(チャップマン・スティック)と呼ばれる特殊な弦楽器を使うことでも知られる。
自らが発案した人差し指と中指にドラムのスティックの様な物を装着し弦を叩いてベースを演奏する「ファンクフィンガーズ奏法」(これはトニーが指貫をはめてベースを弾いていたのをピーター・ガブリエルが面白がったのがヒントになったという)、スラップ奏法などを操る。左手のフィンガリングも個性的で、タメの効いたダイナミックなスライドなど独特のテクニックを持つ。
音楽性
その演奏スタイルはきわめてオーソドックスであり、ベースの王道をいくものである。しかしながら、そのフレージングや音色は非常に個性的であり、ボトムを支えながら、その音楽のスタイルを決定づけ、そしてアーチストを主役として、きちんとサポートしながら、自分の色も出せる稀有なミュージシャンといえる。特に有名なトニー印のフレーズとしてあげられるのはピーター・ガブリエルの「Sledge Hammer」、キング・クリムゾン「Elephant Talk」、ポール・サイモン「Late in the Evening」、アリスタ・オール・スターズ「Rocks」など。一般的にはプログレッシブ・ロックのイメージが強いが、テリー・ボジオとスティーヴ・スティーヴンスとのトリオ、「ボジオ・レヴィン・スティーヴンス」や、ドリーム・シアターのメンバーとのプロジェクト「リキッド・テンション・エクスペリメント」など、ハード・ロック界にもその名を轟かせている。しかしその一方でアーティ・トラウムらのアルバムへの参加でもわかるように、アメリカン・フォークシーンでも重要人物であり、その音楽性は極めて幅広い。プログレ、フュージョン、ロック、フォークといった音楽ジャンルのそれぞれのオリジネーター達からこぞって競演を要請されており、他のセッション・ミュージシャンと比較してもそのジャンルを超えた活動は驚異的である。(たとえばプログレであればイエス(ABWH)、キング・クリムゾン、ピーター・ガブリエル、ピンク・フロイド、フュージョンはブレッカー・ブラザーズ、マイク・マイニエリ、ロックはジョン・レノン、ルー・リード、フォークはポール・サイモンというように)。テリー・ボジオとスティーブ・スティーブンスが最初のミーティングで誰をベースにするか、というドリームリストを作った際に、最初に名前が挙がったのがトニーであるとインタビューで述べている。