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■名前・氏名
秦 郁彦
(はた いくひこ)
■職業
歴史学者
■秦郁彦の誕生日・生年月日
1932年12月12日(年齢88歳)
■出身地・都道府県
山口出身

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秦郁彦

研究・主張

東條英機は、仮に東京裁判の代わりに日本人による裁判が設けられていたとしても、当時の法律に則りチャハル作戦における捕虜殺害、憲兵を用いた弾圧等を罪状として有罪となっただろうと著作『現代史の争点』で主張している。また、昭和天皇が靖国神社に参拝しないようになった理由は「A級戦犯合祀」であると主張して、首相・三木武夫の「私的参拝発言」原因説を唱える岡崎久彦、渡部昇一、櫻井よしこらを『諸君!』誌上や産経新聞「正論」欄で批判している。

張作霖爆殺事件に関しては、一次史料に基づく先行研究に依拠して河本大作大佐を中心とする日本陸軍の犯行であることは明らかであるとし、「張作霖爆殺はコミンテルンの仕業」との説を陰謀論にすぎないと批判している。この説はユン・チュアンとジャン・ハリディの共著「マオー誰も知らなかった毛沢東」の第16章の本文中の中として日本で初めて紹介された。「ソ連情報機関の資料から最近明らかになったところによると」と日本に紹介された。典拠はその注の注としてGRU(ソ連赤軍情報総局)資料をもとに書かれたコルパキディアとポルホロフの共著「GRU帝国」であるとされていた。「マオ」では簡略に扱われていた記述であったが日本では「(もしこの話が本当なら)20世紀の国際関係氏は根本的に見直しを迫られる」松原隆一郎(朝日新聞2006/1/15 書評) 「日本人読者があっと驚くような文書…。もしこれが事実であれば、日本の近代史も多少修正を余儀なくされるのではないか」猪木武徳(文藝春秋2006年2月号 書評) 「もし「マオ」の論証通りであるとすればーつまり張作霖を爆殺したのは日本軍でなかった〜とすれば、この一点だけで、きわめて大きな歴史の書き換えが必要となる」中西輝政(諸君! 2006年3月号) など反響を巻き起こした。しかし産經新聞モスクワ支局長の内藤泰明記者の取材に、この説を最初に主張したドミトリー・プロホロフは「旧ソ連共産党や特務機関に保管されたこれまで未公開の秘密文書を根拠としているわけではない」としたうえで、関係者の回想録や公開文書を「総合し分析」して書いたもので「ソ連の特務機関が行ったのはほぼ間違いない」と説明したという。同記事にコメントした藤岡信勝は「失敗した1回目の作戦の内容は詳しく語られているのに、"成功"した2回目の実行行為に関しては極めて抽象的」と評した。秦は「張本人が、あっさりと伝聞と推論の産物と自認したのだから騒ぎは決着しそうなものだ」とした。

司馬遼太郎に関しては、秦は『昭和史の秘話を追う』にて戦前昭和期(特に旧日本軍)に対する司馬の言説を「新司馬史観」「司馬神話」などとして批判・否定している。また戦後においては、旧日本軍の批判を行うことは圧倒的な大義名分が備わっていたために、司馬の言説を盲信したマスコミや評論家が子引き・孫引きを行い、世間に伝播した結果「新司馬史観」は大きな権威を持って受容される結果となり、旧日本軍の戦車も参謀も将軍も全て劣悪だった、という自虐的イメージが広く定着してしまい歴史学者も逆らうことが困難だったとしている。

家永三郎を「変節組」と批判し、家永教科書裁判においては、国側証人として出廷した。

1990年12月号の文藝春秋において公表された「昭和天皇独白録」について、翌月号の座談会で伊藤隆、児島襄、半藤一利とこの資料の評価を行った。秦は、「独白録」は昭和天皇の戦犯訴追を回避するためにGHQに提出することを念頭に作られた弁明書であり英語版も存在するはずであると主張し、政治的な背景を持たない率直な内輪話の記録に過ぎないとする伊藤、児島と対立した。伊藤は「秦さんのいう英語版が出てきたらカブトを脱ぎますがね(笑)」、児島は「せいぜい秦さんにお探しいただきましょう(笑)」とコメントしている。後に英語版が実際に発見されている。

2006年7月に日本経済新聞社紙上で、昭和天皇がA級戦犯の靖国神社合祀に強い不快感を示した記述が含まれる富田メモの存在が報道された。秦はこの真偽を評価する研究委員会委員をつとめ、このメモが本物であると認定した。

選択的夫婦別姓制度導入に否定的。

評価

嶋津格は、秦の著書『慰安婦と戦場の性』の裏表紙で「このような結論を導くに際して、秦は、自らが国内外にわたって収集、調査した資料を駆使する歴史学的態度を堅持している。そして、その結果生まれた本書は、総合性の上で、既存の類書の水準を超えた、「慰安婦」及び「慰安婦問題」の百科全書ともいうべき力作になった。これでやっと、冷静な遠近法の中で慰安婦問題を語る土壌が作られたのではないか」との賛辞を寄せている。

池井優は、秦の著書『日中戦争史』および『軍ファシズム運動史』を、この分野における古典的名著であると評価した。

チャルマーズ・ジョンソンは、秦の『日中戦争史』を「1930年代の日本の対中政策に関する最も徹底した研究」と評した。

佐々木隆は、東京大学出版会より刊行した『日本陸海軍総合事典』を日本近代史・軍事史研究必携の事典と評価した。

アメリカの軍事史家であるエドワード・J・ドレアは、「日本軍事史研究の長老」と評する。そして、秦の著書を研究や精度、解釈のモデルであると指摘する。

中国研究を専門とするヨーク大学のジョシュア・A・フォーゲルは、「40年以上にわたって日本の戦争に関する優れた研究を発表してきた著名な学者」と評価する。

元ワイオミング大学講師の山本昌弘は、「日本近代史研究で日本を代表する学者」と評価している。

伊藤之雄は、中曽根康弘が、内閣が一致して決めたことには、憲法上天皇には拒否権がなく、自動的に裁可したと誤解しているのも1989年の研究水準に照らすと無理はないとして、「たとえば、高い実証能力を持つ歴史研究者の秦郁彦ですら、1984年に公刊された著作で、次のように述べている。」と記している。また太平洋戦争の終結は、広島への原爆投下とソ連の参戦のどちら(もしくは両方)が主要因なのかは研究者でも見解が一致していないが、両方がないと終戦にもっていけなかったという秦郁彦の聞き取りは当を得ている、とも述べている。

奈良岡聰智は、「私の好きな中公新書3冊 現代の古典を読む」において、秦郁彦の『南京事件 増補版「虐殺」の構造』(中公新書)を挙げて、「膨大な一次史料に基づいて実証的に虐殺の背景に迫っており、その堅牢な実証は他の追随を許さない」「いかなる立場に立つにせよ、本書を読むことなくしてこの事件について語ることはできない」と評している。

北岡伸一は、自身が日本側座長を務めた「日中歴史共同研究」報告書を秦が概ねフェアとコメントしていることについて、さすが日本近代史研究の第一人者と評している。

林博史は、『慰安婦と戦場の性』における資料の引用に際して、出典を示していないものがある、数値を誤っている、証言の一部分だけを抜き取って都合よく引用している、などとして批判している。

永井和は、1998年になって自由主義史観を教材対象とするときにこの問題を調べ始め、この問題の中心はいわゆる広義の強制の責任問題であり、それを『もっぱら「強制連行」の有無を争う』ことに絞ろうとする自由主義史観派が対立の因であり、それに実証的な立場のはずの学者(秦)が協力的だったと批判している。また自身のブログで、『慰安婦と戦場の性』について、秦が「おそらく、(略)大多数を占めるのは、前借金の名目で親に売られた娘だったかと思われるが、それを突きとめるのは至難だろう」とする結論については支持しつつも、結論に至る論証の手続きについて実証史家としては問題がある、などとしている。

前田朗は、上記著作には国連組織への初歩的な間違いや憶測に基づいている記述が多いとも述べ、秦の手法に対して方法論的な疑問を提示している。これに対する秦の反論が「前田朗氏への反論」(『戦争責任研究』 2000年夏季)。

堀和生は、秦の発言である「(慰安婦は)日本兵士の月給の75倍」「軍司令官や総理大臣より高い」収入を得ていたとの評価は、「過度な単純化ではなく事実認識としてまったく間違っている。」と批判している。

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